みんな香水が苦手だというけれど、
ほんのり漂う程度なら、
私は好き。

  

  

平安の世の、上達部も、女房衆も、
みんなこぞって香を焚き染めた。
御簾の間から流れる香に
誰もが心ときめき、
あの人の残り香を、探したのではなかろうか。

  

今の世の中、
視覚も、聴覚も、
実体無きニセモノに晒されるばかりで
心動かされることが少なくなってしまったけれど、
嗅覚はまだまだ繋がっている。
香りは、心の鍵。

  

  

通りすがりの見知らぬ人に
あなたのつけていた香りを感じれば、
あの時のあなたの姿がふと浮かぶ。

  

懐かしい香りを身につければ、
栞代わりのルーズリーフに
香りを託して本を渡した、
そんな青臭い記憶も甦る。

  

  

きっと誰でも鍵がある。
そう信じて止まない。

  

今日はだれの夢を見ようか。

  

NINARICCI,
BELLE DE MINUITの小ビンを取って、
宙に。